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【コラムまとめ】RPAによる被扶養者給与等支払証明書作成

投稿日:2021-04-01
RPA 社労士 まとめ5

こんにちは。社労士事務所RPA研究会事務局です。

今回は社労夢を使用した「被扶養者給与等支払証明書作成」の業務を例に

RPAの組み方や考え方について解説いたします。

社労夢を例にしていますが、SmartHR・セルズ・オフィスステーション・給与奉行など

さまざまなソフトでも応用可能な考え方です。

※当コラムは
RPAによる被扶養者給与等支払証明書作成の自動化①
RPAによる被扶養者給与等支払証明書作成の自動化②
をまとめ、ひとつで読める内容となっております。


被扶養者給与等支払証明書作成業務とは

対象事業所の「被扶養者の給与支払証明書」を作成するにあたり、
人が手作業で行う場合、一般的には次のような流れになります。

  1. 社労夢にログイン

  2. 給与・賞与のテキストデータ(CSV)を作成

  3. 被保険者基本情報を表示(従業員の住所確認のため)

  4. ②と③を見ながら、証明書フォーマット(Excel)に必要情報を手入力

  5. ④を人数分繰り返す

単純な作業に見えますが、人数が増えるほど手間とミスのリスクが大きくなります。


RPAで自動化する際の全体イメージ

今回作成したロボットの大枠は、次のような構成です。

  • Excelから「作業対象の事業所名」と「対象期間」を参照

  • 社労夢にログイン

  • 給与・賞与のテキストデータ(CSV)を出力

  • 被保険者基本情報のテキストデータ(CSV)を出力

  • 以降はExcel内で集中的に処理

Excel上での処理フローは以下の通りです。

  1. 「給与・賞与テキストデータ」から、証明書に必要なデータだけを抽出・加工

  2. 1人分の給与・賞与データを変数に格納

  3. 対象者の住所を「被保険者基本情報のテキストデータ」から取得し、変数に格納

  4. 給与等支払証明書のExcelフォーマットへ自動入力

  5. ②〜④を、データがなくなるまで繰り返し

ロボット自体の考え方は決して難しくありませんが、
工程数が多くなるため、構成と管理のしやすさがとても重要になります。


ロボットを見やすく・保守しやすくする工夫

今回のロボットでは、後から見ても分かりやすいよう、次のような整理を意識しています。

なぜ整理が重要か
  • テストや修正のポイントを素早く把握できる

  • 将来のメンテナンス時に、構造の再理解にかかる時間を短縮できる

  • 作成者以外のメンバーでも、流れを追いやすくなる

過去に作ったロボットの「細部までの動き」を、
数カ月後も完全に覚えていることはほぼありません。
だからこそ「ぱっと見で流れがわかる」設計が効いてきます。

EzRobotで使える整理用の機能

EzRobotには、シナリオを見やすく保つための機能がいくつか用意されています。

  • コメント機能

    • 行ごとに「この処理で何をしているか」をメモしておく

  • インデント・折りたたみ

    • 条件分岐や繰り返しの中身を階層的に見せて、全体像を把握しやすくする

  • 色分け

    • 「社労夢操作」「Excel処理」「ファイル出力」など、パートごとに色を変えて視認性を上げる

  • グループ化機能

    • 関連する処理の塊をひとまとめにし、コンパクトに表示する

  • ロボット実行(別ロボットの呼び出し)

    • 大きな処理を小さなロボットに分割し、「親ロボット」から呼び出す構成にする

どの機能をどこまで使うかに正解はありません。
チームの好みや、シナリオの規模に合わせて、見やすい形に整えていくのがおすすめです。


まとめ

今回は、EzRobotを使った「被扶養者給与等支払証明書作成」の自動化事例のうち、
全体の流れとロボット設計時の考え方にフォーカスしてご紹介しました。

ポイントは次の3つです。

  • 手作業フローを「RPA視点」で分解し、工程を洗い出す

  • 社労夢からはデータ出力までに留め、集計・整形は極力Excel側で実施する

  • コメント・色分け・グループ化などを活用して、「見れば分かる」ロボット構成にする

引き続き、実際にこのロボットを組んだ際の、
具体的なシナリオ構成やExcel側の工夫について解説していきます。

実際にロボットを組む際のポイントを3つに整理してご紹介します。


ポイント1:ロボットを分けて作成する

前回コラムでは、メンテナンス性向上のために「シナリオの整理」が重要という話をしました。
今回のロボットでは、あえてロボットを分割して作成しています。

  • 社労夢での動作(ログイン)

  • 給与・賞与テキストデータ作成

  • 被保険者基本情報のテキストデータ作成

これらは、ほかの業務を自動化する際にも共通して使える処理です。
そのため、それぞれを単体のロボットとして作成し、別シナリオから呼び出せるようにしました。

ロボットを小分けにすることで、

  • 修正箇所の切り分けがしやすい

  • 他ロボットから再利用しやすい

  • 将来的な仕様変更にも柔軟に対応しやすい

といったメリットがあり、結果として運用コストの削減につながります。


ポイント2:空白をあえて変数に格納する

今回のロボットは、社労夢の仕様に合わせた工夫が必要でした。

賞与テキストデータでは、賞与があった場合にしか行が出力されません。
(賞与なしの従業員は、テキストに1行も出てこない)

欲しいパターンは次の4つです。

  1. 賞与なし

  2. 夏季のみ賞与あり

  3. 冬季のみ賞与あり

  4. 夏季・冬季ともに賞与あり

このためロボット内では、

RPAによる被扶養者給与等支払証明書作成の自動化1

  • 賞与の有無と支給時期(夏・冬)を判定

  • 夏季か冬季どちらか一方しか賞与がない場合は、もう一方の変数には「空白」を格納

という制御を行っています。

理由は、繰り返し処理で同じ変数を再利用するからです。

繰り返しの中で「今回の対象者には賞与がない項目」があった場合、その変数を何も触らないままだと、
前回ループ時に格納された値がそのまま残ってしまいます。

そこで、

  • 「値がない」=「空白(今回のケースでは0円)」を明示的に変数へ代入

という一手間を加えることで、誤った金額が入力されるリスクを防いでいます。


ポイント3:Excelを加工してから変数に格納・入力する

給与テキストデータでも同様に、給与支払のない月はデータ自体が存在しません。

例:

RPAによる被扶養者給与等支払証明書作成の自動化2
1月の次が4月になっている場合、2月・3月の情報が存在しない状態です。

このときもポイント2と同様に、2月分・3月分の変数に空白(0円)を格納したい状況が発生します。

賞与は4パターンの判定で済みますが、給与の「支給されている月」の組み合わせはもっと多くなります。
条件分岐を細かく増やして対処することも可能ですが、シナリオが複雑になりがちです。

そこで今回のロボットでは、次のように設計しました。

RPAによる被扶養者給与等支払証明書作成の自動化3

  1. まずExcel上で「給与支払のない月の行」を追加して、全月分の行が揃った状態に加工する

  2. 加工後のExcelをもとに、1行ずつ変数に格納し証明書へ入力していく

先にExcelを「人間が理想とする形」に整えてしまうことで、

  • RPA側の条件分岐を大幅に減らせる

  • シナリオがシンプルになり、読みやすく・修正しやすくなる

といったメリットがあります。


まとめ

今回のポイントを整理すると、次の3つになります。

  • 再利用できる処理はロボットを分割し、ほかの業務でも使い回せる形にする

  • 繰り返し処理で誤値が残らないよう、**「空白もあえて変数に入れる」**という発想を持つ

  • 条件分岐を増やす前に、Excel側を理想形に加工し、その結果をRPAで読み込む構成を検討する

RPAは「ソフト単体の機能だけで完結させよう」とすると、どうしても複雑になりやすいです。
Excelなど他のツールと組み合わせて設計することで、むしろシンプルで安定したロボットになるケースが多くあります。

 

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